⑥ 告示の問題/竹小舞

 平成15年に改正された建築基準法告示は土塗壁に新たな壁倍率を示しましたが、告示の運用における「竹小舞の仕様」と「壁土の配合」の問題は今も解決できていません。告示は仕様規定の例示仕様であり、同等以上の性能を証明することで用いたい仕様を採用できますが、試験法が充分整っていないため性能証明は困難といわれています。
告示における「竹小舞の仕様」について、問題点とその問題解決の試みを報告します。

■竹小舞に関する告示仕様の問題点

 土塗壁を耐力壁で使用する場合の告示仕様のうち、竹小舞に関する項目は次のとおりです。その運用で起こっている問題を以下に整理しました。
○間渡し竹の仕様:小径1.2㎝以上の丸竹又は割竹
○割竹と木舞の仕様:材幅2㎝以上、割竹間隔4.5㎝以内

・・・・幅二センチメートル以上の割竹又は小径一・二センチメートル以上の丸竹を用いた間渡し竹を柱及びはり、けた、土台その他の横架材に差し込み、かつ、当該貫にくぎ(JISA五五〇八−一九九二(鉄丸くぎ)に定めるSFN二五又はこれと同等以上の品質を有するものに限る。)で打ち付け、幅二センチメートル以上の割竹を四・五センチメートル以下の間隔とした小舞竹(柱及びはり、けた、土台その他の横架材との間に著しい隙間がない長さとしたものに限る。以下同じ。)又はこれと同等以上の耐力を有する小舞竹(土と一体の壁を構成する上で支障のないものに限る。)を当該間渡し竹にシュロ縄、パーム縄、わら縄その他これらに類するもので締め付け、・・・・

表−1:建築基準法告示文・小舞竹の仕様部分の抜粋
 

 【問題-1】間渡し竹が太いことで起こる問題

 ○タテ間渡し竹に、末口φ1.2㎝以上の丸竹を1本使いで用いる場合、元の太さはφ1.8㎝を超えます。タテ間渡し竹は、割竹より面外に飛び出し、裏返し塗の塗り厚に影響します。(写真-1)

写真-1:告示仕様では間渡し竹の元はφ1.8㎝ほどになる


○タテ間渡し竹がある裏返し塗り面は、間渡し竹部分の塗り厚は薄くなり、収縮割れが起こりやすくなり、壁の耐力に影響を与えます。塗り厚を厚くすれば、建物総重量の増加を招き建物耐震性への影響が懸念されます。(写真 -2

写真-2:間渡し竹の塗り厚が薄くなる箇所は割れやすくなる


○柱間隔が3尺の場合、ヨコ横間渡し竹が太いと曲げて穴に差し込むことができません。差し込み穴に入れるにはヤリ送りで差し込むことになります。その場合は耐震要素である間渡し竹のダボ的効果は期待できなくなります。(写真-3)

写真-3:径が太いと曲げて穴に差し込むことができない


 

【問題-2】割竹の幅と小舞間隔の問題

○告示仕様に示されている割竹の材幅は2㎝以上です。2㎝幅の割竹は7分割の竹割り機でつくるのですが、全ての幅を2㎝以上にすることは難しく、告示が厳密に運用されることで現場は混乱します。過去にこのような運用が行われたことがあります。
○割竹の間隔4.5㎝以内を厳密に適用した場合、関東間(1間=1,820㎜)の1間壁では、間渡し竹間のタテ割竹本数は7本で、割竹の隙間は約15㎜しかとれず、狭くて割竹を編む仕事は困難になります。また割竹本数は香川県の地域仕様(間渡し竹間の割竹本数は5本)の1.5倍必要になります。(写真-4、5)

写真-4:告示仕様:タテ割竹は間渡し間7本、空き約15㎜


写真-5:地域仕様:タテ割竹は間渡し間5本、空き約37㎜


○告示仕様ではタテ割竹の間隔が狭いため壁土が裏まではみ出し難くなります。そのため裏返し塗りの付着は弱くなり、変形時に壁土の剥離が発生しやすく、耐震性能への影響が懸念されます。(写真-6)

 

■竹小舞の地域仕様を性能試験で評価する

 竹小舞の告示仕様の問題を解決するには地域仕様の耐力性能が告示仕様と同等以上であることを証明することが必要です。
平成21年度、試験実施支援の機会を得て、第三者試験機関による実大試験を行いましました。
 表-2の竹小舞下地2種類の仕様で、告示の壁倍率1.0(片面中塗り)と1.5(両面中塗り)別に2種類、これら各3体、計12体の実大試験を行いました。
 
仕様 間渡し竹小径 木舞竹の幅 木舞竹の間隔
告示仕様 12㎜以上 20㎜以上 45㎜以上
地域仕様 9㎜以上 18㎜以上 55㎜以上

表−2: 竹木舞下地仕様の違い(写真-4、写真-5参照)
 

写真-7:1間壁の実大試験体、4種類×各3体の計12体


 試験の結果は、告示と地域の両仕様ともに、告示で規定する壁倍率を大きく上回るものでした。初期剛性と最大荷重は、両者とも概ね同程度でした。
 竹小舞下地の地域仕様は、告示仕様と同等以上の性能を持つものと考えられます。
仕様 壁倍率 1.0 仕様 壁倍率 1.5 仕様
告示仕様 1.9 2.5
地域仕様 2.2 2.2

表−3:仕様別の壁倍率
 

図-1:壁倍率1.0仕様(中塗り片面塗り)の荷重変形の関係


図-2:壁倍率1.5仕様(中塗り両面塗り)の荷重変形の関係


土壁研究報告執筆者の紹介と概要
大西泰弘(有限会社田園都市設計代表取締役、土壁ネットワーク代表理事)
機会をいただき、これまでの調査や研究の成果を連載することになりました。2015年11月号から、阿波のまちなみ研究会(徳島県建築士会)会報「まち研だより」に投稿の記事を掲載します