② 壁土の製造工程

 昭和40年代後半以降の壁土製造は土練機による量産で安定供給できるようになりましたが、原材料となる粘土は地域や採取場所により様々です。そのため各製造所は地域の材料や現場からの要求にあわせた配合や製造方法を工夫してきました。
今回は、壁土がどのように製造されているのかについて報告します。

■ワラの量から見る、地域による配合の違い

 
材料は粘土、ワラ、水です。粘りの強い粘土には真砂土や砂を加えて粘性と粒度を調整します。これにワラを加えて施工性を高めて乾燥収縮によるひび割れや変形を防止します。配合割合は地域により大きく異なります。
 
-1は壁土圧縮強度試験と同時に計測したワラの配合量(重量)です。ワラの配合量は告示仕様 0.6kg/100㍑を大きく超える地域が多く、粘土の性質と配合方法が多様であることがうかがえます。

図−1:全国の壁土製造所別にみるワラの配合量


 

■ 壁土製造の工程(徳島県美馬市の例)

 徳島県美馬市脇町にある藤本産業さんの壁土製造の工程を紹介します。こちらでは品質管理と安定的供給が行える壁土の生産体制を備えています。製造方法は一般的な工程といえますが各所に効率化と品質管理への工夫がなされています。
以下、製造の流れに沿って説明します。
 
【写真 -1】自社で採取した粘土を乾燥させ、混じっている大きな粒を取り除く。(大きな粒がない粘土を使用する地域ではこの工程はない)

写真−1:乾燥させた粘土を振動機(網目20ミリ)にかける


【写真 -2】粘土の塊を細かく潰す。

写真−2:振動機通過の粘土をロールクラッシャーで細かく潰す


【写真 -3】できた粘土は場内に仮置きする。

写真−3:潰した粘土は場内の仮置き場で保管する


【写真 -4】ホッパーの粘土を定速で動くコンベアに常時一定量が乗るよう調整しながら移す。

写真−4:土練機に入れる粘土の量を計量する定量供給機


【写真 -5】運ばれた粘土に水と少量のワラを加えて回転攪拌し直下の傾斜付プールに貯める。

写真−5:一軸土練機に粘土と水と少量のワラを加えて練る


【写真 -6】ワラ少なめに作った壁土を貯めておく。

写真−6:貯めた壁土はホイールローダで専用運搬車に移す


【写真 -7】プールの壁土を専用運搬車に移し、水と蓑で計量した切りワラを加えて攪拌し、目視で状態を確認してから出荷する。ワラは天日干しの稲ワラを地元農家から購入している。

写真−7:壁土は出荷時に水と切りワラを加える


【写真 -8】磨き上げられたブルー・メタリックの専用運搬車の上部投入口には可動式の日よけの幌を装備し、夏場など運搬中の壁土の乾燥を防ぐよう工夫がされている。

写真−8:壁土専用の運搬車


【写真 -9】専用運搬車は 2軸の攪拌スクリュー付タンクを掲載したダンプ車で、積載量は 2立方メートル。通常の 2トン車の約 1.7倍の積載が可能。

写真−9:壁土運搬車に掲載の2軸の攪拌スクリュー


【写真 -10】壁土の取出し口には蓋が設けられ、現場での壁土の飛散なども調整できる。

写真−10:蓋付きの壁土取り出し口


 

土壁研究報告執筆者の紹介と概要
大西泰弘(有限会社田園都市設計代表取締役、土壁ネットワーク代表理事)
機会をいただき、これまでの調査や研究の成果を連載することになりました。2015年11月号から、阿波のまちなみ研究会(徳島県建築士会)会報「まち研だより」に投稿の記事を掲載します