土壁のつくりかた
技術情報

土壁耐力の大半は壁土が負担している

6尺壁の工程別 耐力と変形の関係

壁土を塗り重ねる工程による荷重-変形の違いを示すものです。「荒壁+裏返し」から「荒壁+裏返し+大直し」、「荒壁+裏返し+大直し+中塗り」へと塗り工程が増すほどに最大耐力が向上することが確認できます。

6尺壁の中塗り 耐力と変形の関係

「中塗り片面」と「中塗り両面」の場合の荷重-変形の違いを比較したものです。中塗りの両面塗り耐力における効果を確認することができます。

3尺壁と6尺壁の耐力性能の違い

3尺壁は、軸組の変形が進んでも壁土部分は元の四角い形状を保ちながら、固定された足下近くから折れ曲がるように壊れるます。6尺壁は、壁面が荷重を受けとめて壁土がひび割れながら壊れます。3尺壁は最大耐力は低めですが変形が進んでも耐力の低下が少なく、6尺壁は3尺壁に比べると最大耐力は大きく、変形が進むと耐力低下が早いという傾向が見られます。

3尺壁・変形=1/10rad

6尺壁・変形=1/50rad

単位長さ当たりの耐力と変形の関係

筋違い併用の影響

現場では土壁が筋かいと併用される例を多く見ますが、「筋かいを併用した場合」と「土壁だけの場合」の違いを荷重-変形グラフで示します。
3尺壁と6尺壁共に、筋かいを併用することで耐力の増加が見られます。ただし、変形の進行と共に筋かいの座屈により土壁が破損するおそれがあります。

3尺壁の耐力と変形の関係

6尺壁の耐力と変形の関係

土壁とその他の耐力壁との違い

住宅で使われる主要な耐力壁の荷重-変形の関係を示すグラフです。耐力特性の違いを理解し、特性が大きく異なる耐力壁を併用する場合は注意が必要です。

主要な耐力壁の耐力と変形の関係

筋違い/木材の座屈

筋違い/仕口金物の破壊

石膏ボード/クギ部分の破壊

軸組/込み栓の破壊

軸組/込み栓の破壊

壁土強度試験

① 穴を空けた円筒容器

② 供試体製作

③ 脱型・自然乾燥

④ 恒温恒湿乾燥機で養生

⑤ 一軸圧縮試験

【一軸圧縮試験法】

壁土の強度性能に影響を与える要因は様々です。粘性土は採取する場所や層により異なり、壁土製造時の藁や水の配合、練り時間なども影響します。品質の高い壁土をつくるためには強度試験を行うことをお勧めします。
推奨する試験法は、円筒形の供試体による一軸圧縮試験です。供試体の寸法は藁すさの長さを配慮して直径125㎜×高さ250㎜とし、試験には実際に施工するものと同じ藁と水を配合した状態の壁土を使用します。
① 樹脂製の円筒容器は余分な水が早く抜けるように穴を空けておきます。
② 錬った壁土を力を加えないように濾紙を巻いた円筒形容器に数回に分けて入れます。
③ ある程度固まった段階で容器から出して自然乾燥します。
④ さらに試験体の品質を一定にするために恒温恒湿乾燥機で養生します。
⑤ 試験機関等で一般に使われている一軸圧縮試験機を使って試験を行います。
この試験法により、壁土の圧縮強度、弾性係数、粘着力、せん断抵抗角など強度特性を得ることができます。

「壁土強度試験」を受け付けます

香川県の四国職業能力開発大学校では、壁土(配合済みの荒壁土、中塗り土)の強度試験を受け付けています。材料の搬入、試験費用などは下記にお問い合せ下さい。
〈お問い合せ先〉
■四国職業能力開発大学校 援助計画課
〒763-0093 香川県丸亀市郡家町3202番地
電話 0877-24-6290 fax 0877-24-6291
■特定非営利活動法人土壁ネットワーク
〒763-0033 香川県丸亀市中府町4丁目2-27(有)田園都市設計内
NPO法人土壁ネットワーク 大西泰弘
電話 0877-85-5126 fax 0877-85-5127

※ グラフは四国職業能力開発大学校で実施した試験データに基づいて作成しています。